この記事では、校正・校閲のトライアルで頻出の罠を紹介します。
第1回のテーマは数字、アルファベット、体裁です。
トライアルで問われるのは、実務でよく遭遇する問題点を見逃さない能力です。
例えば、翻訳工程で発生しがちなミスであったり、見逃されてしまうと目立つ誤りだったりします。
ここでは翻訳物の校正・校閲作業を前提として書きますが、翻訳者としての作業の見直しや、日本語だけの文章の編集の際にも、重要なチェックポイントであるかと思います。
トライアルを受ける方以外も、ぜひ参考にしてください。
数字
数字の打ち間違いは文章中でも目立つので、比較的見つけやすいポイントです。
見つけやすい反面、間違ったまま納品されてしまうと、非常に目立つミスとして残ります。
また、重要な情報だからこそ数字を記載していることが多々ありますが、翻訳しても変わらない情報であるため、言い逃れができません。
研修で、時間がなくても数字は確認するように、と言われたことがあります。
数字に関しては、どう表記するか、という問題もあります。
つまり、全角、半角、漢数字の使い方です。
原則は統一することですが、指示がある場合はそれが最優先です。
変則的なパターンとしては、2桁までは全角とし、3桁以上は半角とする場合などがあります。
また、1,000のように、3桁毎にコンマを打つか打たないか、という点も注意しましょう。
トライアルでは、指示がなければそのままでよいと思いますが、1つの文章中で規則が違っている場合は、統一するのがよいでしょう。
アルファベット
和訳の場合、日本語中のアルファベットも数字と同じく目立ちます。
トライアルでは、経済協力開発機構を意味するOECDを、「OCED」としておくような罠を見たことがあります。
見落とさないようにしましょう。
アルファベットの略語は、英語では複数形になることがあります。
例えば非営利組織が複数あれば、NPOsです。
しかし日本語では単数形と複数形を普通は区別しないので、和文ではNPOとします。
見分けにくい文字
OCRを通した文書の場合、形が似ている文字に変わってしまうことがあります。
例えば、-(ハイフン)と一(漢数字)、l(エル)と1(数字)、ニ(カタカナ)と二(漢数字)、0(数字)とO(オー)などです。
翻訳された文章でこういうものが残ることはあまりないのですが、どこかからコピーしてきた場合など、発生することがないとはいえません。
記号、体裁
原文と訳文を見比べて、内容に問題がないとつい気を抜いてしまいがちですが、文末に句点(。)がないという罠を見たことがあります
(↑例示のため、故意に読点を抜きました。)
また、行頭の1文字分の字下げが1箇所だけ抜けていたことがあります。
似たパターンとして、前の括弧があっても閉じ括弧がない場合や、括弧の種類が異なっていることがあります。
【例えばこの行は、括弧の種類が前後で対応していません。)
最後まで気を抜かずに頑張りましょう。
翻訳がwordで納品されていても、翻訳者が必ずしもwordで作業したとは限りません。
翻訳用ソフトなど別の環境で作業し、最後に手作業やファイル変換機能で納品用の体裁に整えている場合があります。
特に手作業の場合には、体裁を整える作業に抜けが発生しがちです。
・箇条書きの部分が終わっているのに、次の文も箇条書きになっている
・見出しは中央揃えにする規則を部分的に忘れている
・CO2のような元素記号、102のような階乗などで、上付き・下付きが正しく設定されていない
・書名をイタリックにしているのに、その後もイタリックが続いている
・ということがないように気をつけましょう。
(↑例示のため、最後も故意に箇条書きにしました。)
最後に
この記事では、トライアルに頻出の罠として、次のものを紹介しました。
数字(打ち間違い、全角・半角・漢数字、コンマの有無)
アルファベット(打ち間違い、複数形)
見分けにくい文字
記号(句点、スペース、括弧の種類)
体裁(配置や文字修飾等)
この記事で挙げたものは、語学力や内容理解というより、注意力で発見できる誤りです。
作りやすいのでトライアル課題に登場しますが、実務でもよく見かけます。
これらの点に気をつけながら、トライアル突破に向けて頑張りましょう。